新刊『インタープリターズ・ガイドブック』を訳者の山本風音さん、山本幹彦さんよりご寄贈いただきましたので紹介します。
この本は、クマのイラストの表紙でよく知られた『インタープリテーション入門──自然解説技術ハンドブック』(日本環境教育フォーラム監訳、小学館,1994)の改訂版です。アメリカでは加筆が繰り返され、4th Editionまで出ていますが、日本語訳が待たれていました。
監訳者の山本幹彦さんによれば、前回からの大きな違いは第2章に「意味を中心としたインタープリテーション」というアイデアが加えられていることだということで、本書では「意味とは資源に内在するものではなく、意味は一人ひとりのビジターによって作られる」のだと記されています。
もちろん、この間に解説技術(テクニック)も大きく進化しています。また本書専用のウェブサイトもあり、オンライン資料や動画なども充実しています。
ビジターを迎えてガイドをされる様々な現場での実践に役に立つことでしょう。
本書の購入は発行元の「ラーニングアウトドア」からの直販となります。
リンクはこちら
https://learningoutdooredu.wixsite.com/home/interpretation
以下は訳者の山本風音さんの解説文を転載させていただきます。
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【訳者まえがき】
本書『インタープリターズ・ガイドブック』は、1 9 9 4 年に出版された『インタープリテーション入門──自然解説技術ハンドブック』(日本環境教育フォーラム監訳、小学館)の改訂版です。94年版の原著はアメリカで出版された『The Interpreter’s Guidebook (Third Edition, 1994)』ですが、その後2015年に内容が大幅に加筆・修正された第 4 版(Forth Edition, 2015)が本国で出版されたのを受けて、新たに翻訳・編集を行い、日本語版の新しいタイトルで出版することになりました。
9 4 年版の『インタープリテーション入門』と比較すると、改訂版の本書ではページ数が 100 ページ以上増え、内容がより詳細に書き加えられ、著者たちのおよそ2 0 年間にわたるインタープリテーションの実践が盛り込まれたものになっています。例えば、第1章「インタープリテーションのルーツ」で取り上げられている、人々を導くガイドとしてのインタープリテーションの発展の歴史や、第2章の「意味を中心としたインタープリテーション」といったアイデアは、新しく書き加えられた内容です。他にも、随所に新たなアイデアや最新の状況に合わせた記述が加えられており、前回の日本語版に慣れ親しんでいる方も、新たな視点でこの本を手に取っていただけるのではないでしょうか。
本書を初めて手に取る方にとっては、「インタープリテーション」という言葉は馴染みがないかもしれません。本来の意味としては「通訳」を指し、インタビューなどの通訳者は「インタープリター」と呼ばれます。同時に、「インタープリット(interpret)」という語句には「読み解く、解釈する」という意味も含まれています。しかし、本書で取り上げているのは「ヘリテージ・インタープリテーション」、 つまり自然や文化の遺産(ヘリテージ)を読み解き、人々に伝えるという専門的な役割についてです。自然や文化が語りかけるメッセージの通訳者として、人々にわかりやすく伝えるというガイドの手法や考え方は、アメリカの国立公園を中心に発展してきました。国立公園という形で私たちの遺産を保護し、自然や文化の景観を後世に残そうとする取り組みの中で、そうした資源が持つ本質的な価値を人々に伝えることの役割を、インタープリターという専門職が担ってきたのです。
しかし、インタープリテーションとは単に、自然や文化に関する知識や情報をわかりやすく伝えるだけでも、それによってビジターを楽しませることだけでもありません。人々は、何らかの「意味」を求めてその場所を訪れるのであり、そうした意味の探求を促すことがインタープリテーションの目的だとしています。本書では、意味を中心としてインタープリテーションを捉え(第2 章)、何らかのテーマに沿ってプログラムを作り上げていくための段階的なステップが紹介されています(第3章)。また、ビジターとの具体的なコミュニケーションの方法や(第4章)、メッセージを効果的に伝えるための実践のテクニックが数多く盛り込まれています(第5章)。さらに、聴衆を相手にしたトークやプレゼンテーション(第6章)、フィールドを移動して案内するガイドウォークやガイドツアー(第7章)、プログラム以外の自発的な状況でのビジターとの関わり(第8章)など、インタープリテーションのさまざまな場面におけるアプローチや実践例を取り上げています。
本書で扱うインタープリテーションの考え方は、国立公園やネイチャーセンターなどで行われている自然解説プログラムだけに当てはまるものではありません。他にも、博物館や美術館、動物園や水族館、または観光や地域づくりの分野で活動する方々にとっても、参考になるアイデアだと考えています。単に伝えたい情報やその場所の魅力を一方的に伝えるのではなく、訪れた人々がさまざまな資源を自ら体験し、そこから自分なりの意味を見出せるようにするためには、どのような働きかけが必要なのか。人を迎えるすべての人にとって、ガイドの実践に役立つさまざまなアイデアやテクニックが、この本には詰まっています。
さて、ページをめくり、インタープリテーションの旅へと出かけましょう。この大いなる旅は、インタープリテーションのルーツであるガイドの起源、つまり私たちの遠い祖先の物語から始まります。
山本 風音